歯痛錯誤(しつうさくご)は、本当は別の歯や場所に原因があるにもかかわらず、それとは異なる特定の歯が痛いと思い込んでしまう現象です。
脳が痛みの信号を処理する過程で、混乱が生じるために起こります。
今回は、歯痛錯誤の主な原因やパターンについて解説します。
隣接する歯や上下の歯による錯誤
歯痛錯誤でもっとも頻繁に見られるのが、原因となる歯の隣の歯や、噛み合っている上下の歯に痛みを感じるケースです。
人間の歯の神経は、各歯から脳へとつながっていますが、脳に近い部分で神経が収束しています。
そのため、脳がどの枝から信号が来たかを正確に判別できず、隣の歯や反対側の顎の痛みとして誤認してしまうことがあります。
例えば下の奥歯に深い虫歯があるのに、上の奥歯が痛いと訴えて来院する患者さんは少なくありません。
歯科医師は患者さんの訴えだけでなく、レントゲンや各種検査を用いて客観的に原因を特定する必要があります。
非歯原性歯痛
「歯が痛い」と感じていても、実は歯そのものには全く問題がなく、筋肉や神経、鼻の病気などが原因となっている場合があります。
代表的な例は、副鼻腔炎に伴う歯痛です。
鼻の横にある副鼻腔は上の奥歯の根に近いため、副鼻腔の炎症が歯の神経を刺激し、まるで激しい虫歯のような痛みを感じさせることがあります。
また顎を動かす筋肉の凝りや、三叉神経痛といった神経疾患、さらには心筋梗塞の前兆として左側の歯に痛みが出ることも知られています。
これらの場合、歯をいくら削ったり抜いたりしても痛みは改善されないため、原因を見極める専門的な診断が不可欠です。
心理的要因や脳の記憶による痛み
ストレスや不安といった心理的な負担が、脳の痛みを感じるセンサーを過敏にし、存在しない歯の痛みをつくり出すことがあります。
これを心因性歯痛と呼びます。
また過去に激しい痛みがあった歯を治療した後でも、脳がその痛みを記憶していて、何らかのきっかけで「まだ痛い」という信号を出してしまうケースも存在します。
こうした錯誤は、特定の部位に明らかな疾患が見当たらないことが特徴です。
さらに精神的な緊張が続くことで食いしばりや歯ぎしりが生じ、それが間接的に歯の違和感や痛みとして自覚されることもあります。
この記事のおさらい
今回の記事のポイントは以下になります。
・歯痛錯誤には、原因となる歯の隣の歯や、噛み合っている上下の歯に痛みを感じるケースが多い
・歯痛には、実際歯そのものには問題がなく、筋肉や神経、鼻の病気などが原因となっている場合もある
・心理的な負担が脳の痛みを感じるセンサーを過敏にし、存在しない歯の痛みをつくり出すこともある
以上のポイントはしっかりと押さえておきましょう!








